前作との接続

ローカルLLMで読める記事は書けるのか — 6モデル比較してみた の続編。

前作は テキスト生成を Mac M1 Max 64GB で 6モデル比較した。今回は同じハードで 画像生成を比較する。やってる事は変わらない:

個人が頑張れば手の届くローカル AI で、どこまでまともな成果物が作れるか?

ところが、書き始めた時点での仮説は派手に裏返った。先に結論を書く:

  • 当初の本命だった Flux dev は写実度トップ、ただしアジア食文化と漢字には弱い
  • ダークホースが Qwen-Image。ただし1枚 93分の狂気の遅さで実用外
  • 救済役が Qwen-Image Lightning8 step に蒸留したら、Full より良くなったプロンプトがある

つまり用途別に2モデル併用が今回の答え。前作の「qwen MoE 一本化」とは構造が違う。

自分なりの「画像」とは何か

前作で「ニュース」を定義した時と同じ問いが立つ。「画像生成」を比較するために、まず「使える画像」を定義しないといけない:

  • AIアート風の派手な絵 — Midjourney っぽい "盛った" 絵。アーティスティックだが、実用には微妙
  • ストックフォト風の写実画像 — 写真と区別つかない品質。ブログ・記事・SNS の挿絵に使える
  • 特定文化を正確に表現できる画像 — 日本のラーメン、居酒屋、和風建築を「日本人が違和感を持たない形」で描けるか

3つ目を主軸に置く。写実度が高い ≠ 文化的に正しい という構図が、検証していく中で何度も出てきた。

TL;DR

  • 同じ8プロンプトを 計10モデル (ローカル 8 + Gemini Web UI / API) に食わせて比較した(Qwen-Image は Full / Lightning の2系統、Gemini は Web UI / API の2経路)
  • すべて Mac M1 Max 64GB + Diffusers で完結(Gemini のみクラウド: Web UI 中心、API は v9b 有料記事 で別途検証)
  • 主な発見:
    • Gemini (Nano Banana) は別格。漢字・文化文脈・解剖学すべて完璧
    • Flux dev はローカル写実度トップ、ただしアジア食文化バイアス("ramen" → パクチー入り)と漢字描画 NG
    • Qwen-Image (Full) はローカル唯一漢字を正しく書けるが、1枚 93分 / 8枚 12時間で実用外
    • Qwen-Image Lightning (8 step) が今回最大の発見。Full の 9倍速 (1枚 10分) で、しかも指の数・物体配置・店の雰囲気が Full より良いプロンプトがある
  • 採用方針は用途別 2モデル併用
    • 英語圏向け / 写実重視 → Flux dev
    • アジア圏向け / 文化文脈含む → Qwen-Image Lightning
  • 評価軸 3層構造で整理:
    1. 物理的正確性(指の数、物体配置)
    2. 文字正確性("LOCAL AI"、"M1 MAX 64GB"、「居酒屋」)
    3. 文化的再現度(食文化・建築・習慣)← 本記事で初めて立てた軸

検証構成

試したモデル 10

Ver モデル サイズ アーキテクチャ ライセンス
1 SD 1.5 4GB dense, 古典代表 CreativeML OpenRAIL-M
2 SDXL base 1.0 7GB dense CreativeML OpenRAIL-M
3 SDXL Turbo 7GB distilled, 1-step non-commercial
4 SD 3.5 Medium 5GB DiT, 最新 SD系 Stability Community
5 Flux.1 [schnell] 23GB DiT, 4-step Apache 2.0
6 Flux.1 [dev] 23GB DiT, 28-step non-commercial
7 Qwen-Image (Full) 40GB Alibaba 20B、漢字描画期待 Apache 2.0
8 Qwen-Image Lightning 40GB 上の 8-step 蒸留 LoRA Apache 2.0
9 Gemini 3.1 Pro (Web UI) クラウド Gemini 3.1 Pro モード Google AI Pro
10 Gemini 2.5 Flash Image (API) クラウド Google、gemini-2.5-flash-image 経由 API 従量課金 (v9b 有料記事で詳細)
HiDream-I1 17GB LLaMA-3 text encoder MIT (動かず)

プロンプト 8個(評価軸別)

# カテゴリ プロンプト テスト軸
01 写実 a cute cat sitting on a wooden bench in a sunny park, photorealistic 基本品質
02 写実(食文化) a bowl of ramen with chashu and soft-boiled egg... top-down view, photorealistic 文化的再現度
03 テキスト英 a wooden sign with bold text saying "LOCAL AI", standing in a meadow at sunset 文字描画
04 テキスト英+数字 a developer's t-shirt with the text "M1 MAX 64GB" printed in retro 80s style テキスト+スタイル
05 人物 a woman developer working at a laptop, holding a coffee cup, soft window light, realistic photo 解剖学
06 アート a glowing AI brain made of circuits and neon, cyberpunk style, dark background 抽象表現
07 複雑構図 three robots playing chess in a sunlit library, books on shelves, warm afternoon light 多要素配置
08 漢字 a wooden izakaya sign with the kanji "居酒屋" carved in calligraphy style, hanging beside a paper lantern at night 漢字+文化

各プロンプトに 記事のテーマと連動した隠しメタを仕込んだ:

  • "LOCAL AI" = 記事の主題
  • "M1 MAX 64GB" = 検証ハード
  • 「居酒屋」 = 日本人作者の文化文脈

各モデルが「我々の話」をどれだけ正確に絵にできるかを試す構造。

実行スペック

項目
Mac M1 Max / 64GB
GPU 制限 iogpu.wired_limit_mb=61440(60GB)
Diffusers 0.37.1 (PyTorch 2.11 + MPS)
Lightning peft 0.19.1 (LoRA 適用)
MFlux 0.17.5 (使用断念、Diffusers に一本化)

ぱっと見の比較

10モデル × 8プロンプト = 88セルを1枚に並べた(HiDream は動かず空欄、各セル 320px サムネ):

モデル比較グリッド

最上段の猫から最下段の「居酒屋」まで、左から右でモデルが並ぶ。Gemini Web UI の手前に縦線で区切って「ローカル群 | クラウド」、最右列に Gemini API(ぼかし表示) を配置している。

最下段の漢字「居酒屋」がこの記事のハイライト。ローカル群でまともに書けてるのは Qwen Full と Qwen Lightning の2列だけで、その他はすべて架空字。Gemini Web UI は当然のように完璧。

そして 最右列の Gemini API は意図的にぼかしている。「Web UI と API で同じ品質が出ると思ったら、API は別物だった」という発見の検証結果は、身銭を切って撮った素材として v9b 有料記事 ¥300 に格納した(特に 04 M1 MAX 列が API で空欄になっているのに気づくと思う、これも v9b で解説)。


結果一覧

Ver モデル サイズ 実行時間/枚 解像度 一言
1 SD 1.5 4GB 22秒 512 古典代表、現代基準では絵本
2 SDXL base 1.0 7GB 60秒 1024 中堅安定、SDXL あるある(要素追加)
3 SDXL Turbo 7GB 5秒 512 爆速だがぼやけ
4 SD 3.5 Medium 5GB 6分 1024 一見まとも、よく見ると変
5 Flux schnell 23GB 2分 1024 クール調、写実中位
6 Flux dev 23GB 12分 1024 写実トップだが文化偏向
7 Qwen-Image (Full) 40GB 93分 1024 漢字 ◯、ただし狂気の遅さ
8 Qwen-Image Lightning 40GB 10分 1024 Full より良い箇所すらある救済役
9 Gemini 3.1 Pro (Web UI) クラウド (Web) 1024+ 別格
10 Gemini 2.5 Flash Image (API) クラウド 8秒 1024 速いが体系的に Web UI に劣る (v9b)
HiDream-I1 17GB tokenizer エラー

実行時間/枚は8プロンプト平均。Qwen-Image Full の 93分は誤植ではない(50 step / 1024px / true_cfg_scale=4.0、Apple MPS)。8枚揃えるのに 12時間かかった。寝てる間に走らせて起きたら完走、という運用。


10モデル機能比較表

5段階評価(★が多いほど良い、商用利用は「★★★★★ = 完全フリー」基準)。

評価軸 SD 1.5 (2022) SDXL base (2023) SDXL Turbo (2023) SD 3.5 Med (2024) Flux schnell (2024) Flux dev (2024) Qwen Full (2025) Qwen Lightning (2025) Gemini Web UI (2025) Gemini API (2025)
写実度 ★★ ★★ ★★★ ★★★★ ★★★★ ★★★★ ★★★★ ★★★★★ ★★★★
英文字描画 ★★ ★★★ ★★★★ ★★★★★ ★★★ ★★★★★ ★★★★★ ★★★★
漢字描画 ★★★★★ ★★★★★ ★★★★★ ★★
アジア食文化 ★★ ★★ ★★★ ★★ ★★ ★★★★ ★★★★ ★★★★★ ★★★★
解剖学(指・体) ★★ ★★ ★★ ★★ ★★★★ ★★★★★ ★★★ ★★★★ ★★★★★ ★★★★
スタイル指定 ★★ ★★ ★★ ★★★ ★★★ ★★★★★ ★★★ ★★★★ ★★★★★ ★★★★
抽象アート ★★ ★★★ ★★ ★★★ ★★★ ★★★★★ ★★ ★★★ ★★★★★ ★★★★
数の指定 ★★★★ ★★ ★★ ★★★★ ★★★★★ ★★★★ ★★★★ ★★★★★ ★★★★
速度 (1枚) ★★★★★ (22秒) ★★★★ (60秒) ★★★★★ (5秒) ★★★ (5分) ★★★★ (2分) ★★ (12分) ★ (93分) ★★★ (10分) ★★★★★ (数秒) ★★★★★ (8秒)
商用利用 ★★★★★ ★★★★★ ★ (NC) ★★★ (条件付) ★★★★★ ★ (NC) ★★★★★ ★★★★★ ★★★★ (要月額) ★★★ (要 API 課金)

キー観察:

  • Flux dev / Qwen Lightning が「ローカル群でほぼ全領域 ★★★★」を埋める。Flux dev は英語圏・抽象・スタイル指定で最強、Qwen Lightning はアジア要素 + 文字描画で最強
  • 漢字描画は Qwen 系のみ実用域。SD/Flux 系は ★1(架空字)で使い物にならない、Gemini API は意外と ★★ どまり (v9b で実証)
  • Gemini Web UI は全項目で ★★★★★、ただし漢字描画は API 経由だと ★★ に落ちる(v9b 参照)
  • 採用方針:英語圏 = Flux dev / アジア圏 = Qwen Lightning の2モデル併用で、Gemini Web UI 課金できる人はそちら一本

失敗事例コレクション

ローカルAIあるあるの「笑える失敗」をモデル別に並べる。記事の主役級の素材。

SD 1.5 — 古典代表、現代基準では絵本

  • 猫 (01): 顔が縦長で歪み、目の位置がズレてる

    SD1.5 cat 顔が縦長で目がズレてる

  • ラーメン (02): 卵5個。トッピングで卵追加しまくったのか?というレベル

    SD1.5 ramen with five eggs

  • LOCAL AI (03): OOLDD AIXNIA という架空の謎言語。Latin 文字すら正しく書けない

    SD1.5 LOCAL AI sign with broken text

  • 居酒屋 (08): 完全にお経・巻物。建物どころか提灯すら無い、書道作品が出てきた

    SD1.5 izakaya as a Buddhist sutra scroll

→ SD1.5 は 2022年生まれの初代モデル。現代の基準で見ると絵本イラストレベル、というより文字すら成立しない。

SDXL base 1.0 — 中堅、要素を勝手に追加する癖

  • ラーメン (02): プロンプト photorealistic完全無視してアイソメ・フラットイラスト調。「やる気のないストックイラスト」感

    SDXL base illustrated ramen with three eggs

  • 女性開発者 (05): 一見まとも、でも左手の指が消失 or 不自然 + プロンプトに無い 2杯目のマグカップが背景にも追加される(SDXL あるある)

    SDXL base woman dev with missing finger and extra mug

  • 居酒屋 (08): 看板の漢字が「兄ノ廊」「日方廴」みたいな架空字

    SDXL base izakaya with fictional kanji

SDXL Turbo — 5秒爆速だがぼやけ

  • 全プロンプト: 顔・目鼻口・毛並み・テキストの細部が一様にソフト

    SDXL Turbo cat blurred

  • これは仕様:Adversarial Diffusion Distillation で 30 step を 1 step に圧縮 → 高周波ディテールが先に犠牲になる

  • 用途: サムネ大量生成、プロトタイピング、オンデバイス。最終成果物には弱い

SD 3.5 Medium — 一瞬まとも、ズームすると変

  • ラーメン (02): パクチーなし・卵1個 ✓ 文化的に健闘、ただしチャーシューがハム/サラミ風で煮込み感ゼロ

    SD3.5 Medium ramen with ham-like chashu

  • 女性開発者 (05): 紙コップをノートPC のキーボード上に置いてる(液体こぼしたら数十万円)+ コーヒーカップを持つ手の指がコップに刺さって貫通してる

    SD3.5 Medium woman dev with cup on laptop and finger piercing through cup

  • 居酒屋 (08): 雰囲気は良いが看板は「未学夏」みたいな架空字

    SD3.5 Medium izakaya with fictional kanji

→ サムネ評価では合格、原寸評価で減点。「一瞬まとも、ズームすると変」の典型。

Flux schnell — 4-step 蒸留、クール調・写実中位

  • 写実度は中、文化的にはギリギリ、文字はそこそこ。Apache 2.0 で商用 OK だが、dev に対する明確な品質劣化を感じる
  • このあと出てくる Qwen-Image Lightning と「蒸留版」という意味では兄弟。だが本家 schnell の蒸留は本気度が低い印象(Flux dev → schnell でステップ数だけ削った感)

Flux dev — 写実トップだが文化偏向(英語圏向け本命)

ローカル写実度トップ。だが、最強モデルが万能ではないことを露呈する:

  • 猫 (01): プロンプト photorealistic 指定なのにアニメ・イラスト調になる。可愛いが写真ではない

    Flux dev cat in anime / illustration style

  • ラーメン (02): 雰囲気は最高、でもパクチー入り。アジア料理ごちゃ混ぜバイアス

    Flux dev ramen with cilantro

  • LOCAL AI (03): 文字は完璧、夕陽のレンズフレアまで完成形

    Flux dev LOCAL AI sign

  • 居酒屋 (08): 京都町家の雰囲気は別格、でも看板の漢字は「典桔」みたいな架空字そして致命的な文化誤読: 「居酒屋」は大衆向け酒場なのに、Flux dev は京都町家風(料亭の意匠)で出してくる。「料理 + 提灯 = 京都」という単一解釈に流れている

    Flux dev izakaya with mood but fictional kanji

→ Flux dev のキャラ:「英語圏の写実なら最強、漢字とアジア食文化は捨てる」。本記事の用途別採用では 英語圏向け本命として残す。

文化的再現度の新しい軸: Flux dev は「日本らしさ ≒ 京都らしさ」というステレオタイプで日本を理解している。居酒屋と料亭、銭湯と寺、新宿のネオン街と京都の路地、すべて京都町家風に解釈する。これは「国レベルの偏向」(パクチー入りラーメン)より一段深い、国内文化レベルでの単一解釈問題。第3弾「各国料理」では国軸を見るが、その中にもう一段「国内サブカル/階層の偏向」が潜んでいる。

HiDream-I1 — tokenizer エラーで動かず

  • 期待: Flux dev 対抗の中華系オープン (MIT ライセンス)
  • 結果: ロード時に「sentencepiece or tiktoken 必要」エラー → 実は内部で LLaMA-3 を text encoder として使っているため、Meta の gated repo 認証が必要だったのが真因と推測
  • 申請中、本記事公開時点では未動作

Qwen-Image (Full) — 漢字は書ける、しかし1枚 93分

期待値最大のダークホース。Alibaba 20B、Apache 2.0、漢字描画 + アジア食文化 の両方に強いと噂されていた。Flux dev が苦手な領域を補完するアジア圏向け候補として、写実度・文字描画・解剖学・漢字描画の4軸で見た結果:

  • ラーメン (02): チャーシュー1枚、卵半分、青菜、パクチー無し ✓ Flux dev のアジア食文化バイアスを回避

    Qwen Full ramen

  • LOCAL AI (03): "LOCAL" は完璧、でも "AI" の "I" を省略してロゴ風にぼかす誤魔化し

    Qwen Full LOCAL AI text

  • M1 MAX 64GB Tシャツ (04): Tシャツ自体は完璧、ただし "MAX" を歪ませて誤魔化す

    Qwen Full M1 MAX tee with distorted MAX

  • 女性開発者 (05): PC が宙に浮いてる、画面真っ青で非表示、左手の指の取り方も不自然

    Qwen Full woman dev - PC floating, fingers awkward

  • 居酒屋 (08): 「居酒屋」3文字、ローカル唯一きれいに縦書きできた。提灯のアウトラインも自然。ただし提灯と看板はあるが、店構え自体の表現が薄い(背景がほぼ闇)

    Qwen Full izakaya

→ Qwen Full のキャラ:「漢字とアジア食文化は確かに描ける、でも文字を読める範囲で誤魔化す手癖」。前作 (LLM比較) で見た Qwen テキスト版の「はい、以下に…」前置き混入問題と同じ匂いがする。Alibaba モデル全般の癖かもしれない。

そして致命的なのが速度。50 step、true_cfg_scale=4.0 で 1枚 平均 93分、8枚 12時間。これは「Mac で寝てる間に回す」前提でも厳しい。

→ 実用に耐えない、というのが Full の評価だった。Lightning に出会うまでは。


Qwen-Image Lightning — 救済役、ローカル最強候補

Qwen-Image には lightx2v が公開している 8-step 蒸留 LoRA(Qwen-Image-Lightning)がある。同じベースモデルに LoRA を適用して 50 step → 8 steptrue_cfg_scale=1.0 で生成する。

走らせた結果:

項目 Full Lightning
Steps 50 8
true_cfg_scale 4.0 1.0
1枚平均 93分 9.7分
8枚合計 12時間 80.8分(9倍速)

ここまでは予想通り。驚いたのは品質だった。

過剰ステップで崩れる現象 — 8-step が 50-step を超える

  • 猫 (01): Full / Lightning ともにローカル中トップレベルの写実度。Flux dev がアニメ調に流れたのと対照的に、両方とも自然なベンチに座る猫(ただし若干イラスト感は残る)

    Qwen Lightning cat

  • ラーメン (02): 緑の謎野菜は入っているが、それ以外はほぼ完璧。チャーシュー、卵、海苔、ごちゃごちゃしないシンプルな構成

    Qwen Lightning ramen

  • 女性開発者 (05): Full は PC が宙に浮き、指がおかしい。Lightning は指5本、PC が机にちゃんと置かれている、位置関係も自然。スライダーを左右に動かして比較してみてほしい

    Qwen Full(PC が宙に浮く・指が破綻) Qwen Lightning(指5本・PC 設置 OK)

  • 居酒屋 (08): Full でも漢字「居酒屋」+ 提灯 + 看板までしっかり描けている (Gemini ですら微妙な居酒屋を返してくる回がある中で、ローカルとしてはかなり優秀)。Lightning は店構え・暖色照明まで揃って完璧

    Qwen Full(漢字 OK・店構えやや弱い) Qwen Lightning(漢字 OK・店構え完璧)

→ つまり Lightning では 解剖学・物体配置・雰囲気・文字描画すべてが改善するFull の文字誤魔化し手癖("I" 省略・"MAX" 歪ませ)も Lightning では消える。AI brain など抽象アート系も Flux dev に解像度感ではやや劣るが、実用域には入るLoRA 8-step は速度と品質を同時に手に入れる稀な蒸留

なぜ 50 step が 8 step に負けるのか

完全には説明できないが、仮説:

  • Full は 50 step で "考えすぎ": 過剰なステップで小さなアーティファクトが拡大する(PC が宙に浮く、指が変、店構えが薄れる)
  • Lightning は 8-step に最適化された LoRA で蒸留済み: 短いステップでも崩れないよう "最終形" を直接予測する向きに重みが調整されている
  • 結果: 「速度のために品質を捨てる」のが普通の蒸留、Lightning は速度と引き換えに副産物として安定性を得た

これは前作の「MoE は dense 27B より速くて、しかも文章力で勝る」と同じ構造。サイズ/ステップ数を増やせば品質が上がる、という直感は罠

1枚 10分は実用域

  • Mac M1 Max 64GB / Apple MPS で 1枚 約10分
  • 8枚 80分 = 昼休みに比較セット作れる
  • API 課金ゼロ、固定費ゼロ
  • アジア圏向け記事・ブログの挿絵にはこれが本命

別格: Gemini 2.5 Flash Image (Nano Banana)

ここまで「ローカルあるある失敗集 + Lightning 救済」を並べてきたが、Gemini を見るとすべての基準が変わる。

居酒屋(漢字検証)の決定的な差

  • ローカル群: Qwen Full (2025) / Qwen Lightning (2025) は「居酒屋」3文字を書けたが、雰囲気は Lightning の方が完璧
  • Gemini (2025): 「居酒屋」3文字 + 墨の刷毛感、雨上がりの石畳の光の反射、提灯のネオン滲み、写真と区別つかない
Qwen Lightning (2025) Gemini (2025)
Qwen Lightning izakaya Gemini izakaya
漢字・店構え・暖色照明 完璧 雨上がりの石畳まで作り込まれた "シーン"

Lightning は十分戦える。Gemini が別格なのは、絵の中だけじゃなく外まで作るから(雨が降ったあとの石畳、店の前の人影、看板を超えた周辺ストーリー)。

ラーメンの文化文脈

  • Flux dev (2024): パクチー入り → 「日本のラーメン」としては違和感
  • Qwen Lightning (2025): 緑野菜は微妙だがほぼ日本ラーメン
  • Gemini (2025): チャーシュー4枚 / 海苔ピーン / 半熟卵1個(断面)/ メンマ(穂先)/ ナルト(渦巻き模様)/ 白ごま / 青ねぎ / 木箸 / レンゲ / 七味の小皿 / 水のグラス / 古材の木製テーブル
Flux dev (2024) Qwen Lightning (2025) Gemini (2025)
Flux dev ramen Qwen Lightning ramen Gemini ramen
パクチー入り 緑野菜だけ謎、それ以外完璧 ナルト・メンマ・小皿まで「ラーメン屋の写真」

3段階のグラデーションが見える:パクチー入り → 日本ラーメン → 日本のラーメン屋。Gemini はもはやラーメン屋の写真。プロンプトを超えて「シーン全体のコンテクスト」を作っている。

女性開発者シーンの作り込み

ローカル群でまともに描けたのは Flux dev (2024)Qwen Lightning (2025) の2系統。SD 系は指消失や PC 上のコーヒーカップで脱落(前述)。3段階のグラデーションが見える:

  • Flux dev (2024): 自然な体勢、指問題なし、PC 設置 OK、観葉植物・ノートまで小道具あり。実写としてしっかり描けていて文句なし(猫プロンプトのアニメ調手癖は人物では出ない、サブジェクト依存)
  • Qwen Lightning (2025): 指5本・PC 設置 OK ✓ 構図はシンプルでストック写真寄り
  • Gemini (2025): 指5本でセラミックカップを自然に握る / ラップトップ画面にコードが表示 / 横モニターにもコード / "Clean Code"(Uncle Bob の名著)の本 / 手書きノート / 観葉植物 / ヘッドホン / メカニカルキーボード / 背景に他の開発者をぼかしで配置
Flux dev (2024) Qwen Lightning (2025) Gemini (2025)
Flux dev woman dev Qwen Lightning woman dev Gemini woman dev
自然な構図、小道具あり、実写として文句なし 指 OK・PC OK・自然なストック写真 指5本自然、Clean Code の本まで作り込み

→ 「Gemini は撮影現場、Flux dev はキレイなストック写真、Qwen Lightning は素朴なストック写真」のグラデーション。ストック写真が出せるなら、ローカルとして十分

対話型編集という別軸

Gemini の真の強みは生成だけじゃない。生成された居酒屋画像に対して「そんなところに看板あったらぶつかるよ?w」とツッコんだら、Gemini はボケてぶつかった人を画像内に追加してきた(汗をかいて頭を抱える男性)。

これはローカル系にはできない

  • ローカル系: 「テキスト → 画像」の片道のみ
  • Gemini: 「画像 + テキスト指示 → 編集」が同モデルで可能

ローカルで対話編集をやろうとすると Qwen-Image-Edit という別モデルが必要(Qwen-Image とは別 repo、別 40GB)。Gemini は1モデルで両方こなす

Web UI 一択、API には罠がある

Gemini を使うなら Web UI 経由 (aistudio.google.com の Gemini Pro モード) が前提。Google AI Pro プラン ($19.99/月) に加入していれば追加料金なしで本記事と同じ品質が出る。

一方、API 経由 (gemini-2.5-flash-image) は同じモデル名でも品質に体系的な差がある。漢字描画が崩れる、商標プロンプトでガードレール発動、対話編集での修正も完璧にならない、シーン作り込みも浅くなる、等。「課金して API で叩けば bulk 生成最強」というナイーブな仮説は外れた。

[有料記事 ¥300] Gemini API 課金が最強だと思ってた、結果はいかに?(v9b) 身銭を切って 8プロンプト + 対話編集を API で検証した記録。Gemini に課金して API を使おうとしている人は読むべき内容


評価軸 3層構造

ここまで書いてきた失敗を整理すると、評価軸が 3層に分かれる:

1. 物理的正確性  (解剖学・物体配置)
   → 指5本か、コップが PC上に乗ってないか、PC が宙に浮いてないか
2. 文字正確性   (テキスト・漢字)
   → "LOCAL AI" が綴れるか、「居酒屋」3文字書けるか
3. 文化的再現度 (食文化・建築・習慣)        ← 本記事で初めて立てた軸
   → ラーメンにナルト・メンマがあるか

3つ目は 本記事のオリジナル視点

なぜ「文化的再現度」が独立軸として面白いか

  • ベンチマークでは測れない: FID / CLIP Score では出ない
  • 学習データの地理的偏向を露呈: LAION (Stable Diffusion 系) は英語圏中心 → 「ラーメン = アジア麺」と粗く学習。Alibaba (Qwen-Image) と Google の Imagen 系 (Gemini) は中華圏・世界各地のローカルデータが豊富 → 「ラーメン = 日本」と正確
  • 写実度と独立: Flux dev は写実度トップ + 文化的にむしろ低スコア(あくまでもアジア圏視点の話)
  • 現地の人にしか分からない違和感: パクチー入りラーメンは、海外の読者には騙される、日本人は一発で見抜く

アンカリング効果の罠(読者への問い)

ローカル 画像生成AI 10系統を試して「思ったより悪くないな」と思った。

SD1.5 のラーメンを見たら笑った(卵5個)。 Flux dev のパクチー入りラーメンが、許容範囲に思えてきた。

Qwen Full の 1枚 93分 を「12時間で 8枚 = まあ寝てる間なら…」と納得しかけた。

でも Lightning が同じ品質を 10分で出した瞬間、Full の 93分が一気に滑稽に見えた。 さらに Gemini を見て、我に帰った。

これが 「比較対象に飼い慣らされる」現象だ。 AI を単独で見ると感覚がバグる。並べないとわからない。

ベンチマークを信じない理由はここにある。評価は実物を、できれば文化文脈を含めて並べないと、本当のことは見えない


採用方針:用途別 2モデル併用

前作 (LLM 6モデル比較) は qwen MoE 一本化だった。今回は違う:

用途 採用 1枚あたり 理由
英語圏向け / 写実重視 Flux.1 [dev] 12分 写実トップ、英文字描画も強い、SDXL 系より別格
アジア圏向け / 文化文脈含む Qwen-Image Lightning (8-step) 10分 漢字 ✓、アジア食文化 ✓、解剖学 ✓、速度実用域
クラウド許容 Gemini 2.5 Flash Image (Web UI 経由) (Web) 別格。Google AI Pro プランに加入なら追加料金なし。API 経由は品質劣るので注意 (v9b 有料記事 ¥300)

前作との対比が興味深い

  • LLM (テキスト): qwen MoE が英文執筆 + 日本語翻訳の両方で強かった → 一本化
  • 画像: Flux dev が英語圏の写実は最強、Qwen Lightning がアジア圏の文化文脈は最強 → 用途分割

つまり画像は文化バイアスがテキストより強い。学習データの地理的偏向が、テキストよりも視覚要素に深く刻まれている、という構造仮説が立つ。これが第3弾「AI が描く各国料理 — 学習データの地理的偏向」につながる。


教訓まとめ

モデル選定

  • 64GB Mac の実用上限は 40-50GB モデル(VAE/DiT 中間テンソル込み)
  • 蒸留 LoRA は侮るな: 単に速いだけでなく、過剰ステップで崩れる現象を回避して品質も上げることがある(Qwen-Image Lightning 8-step)
  • 古典 (SD 1.5) は絶対基準として依然有用: 「文字すら書けない時代」を実感する
  • HiDream のような魅力的な MIT ライセンスでも、内部依存(LLaMA-3)で動かないことがある

Diffusers / MFlux 運用

  • MFlux 0.17.5 は VAE 依存先未解決のバグあり → Diffusers に一本化が安全
  • HF gated repo は申請が増えた: SD3.5、Flux dev、HiDream (LLaMA-3 経由)、各認証必須
  • Qwen-Image Lightning は peft が必要: pipe.load_lora_weights() 呼ぶ前に pip install peft を忘れずに(最初これで 1.3 分で LOAD FAILED した)
  • Apple MPS は SDXL 系で実用速度、Flux dev で 12分/枚は耐え難い (NVIDIA なら 1分台)、Qwen Full の 93分/枚は寝てる間専用

プロンプト設計

  • 記事テーマと連動した「隠しメタ」を仕込むと記事のキャラ立つ ("M1 MAX 64GB" T シャツ等)
  • 漢字・現地語を1個入れると文化的偏向が浮き彫りに
  • 写実プロンプトでも Flux dev は猫・動物系でアニメ調に流れる ことがある(人物・物体は実写で安定)→ 動物プロンプトでは guidance_scale を上げる
  • Qwen Full は文字を読める範囲で誤魔化す手癖あり("AI" の "I" 省略、"MAX" 歪ませ)→ Lightning では消えるので Full を単体で使う場面のみ警戒

おまけ: 各モデルの記事全文 (公開済 unlisted)

(公開後に URL 埋め込み)


注釈

  • 「Gemini」と「Nano Banana」の関係: 本記事で「Gemini」と呼んでいるのはすべて画像生成で、LLM の Gemini そのものではない。Google の画像生成バックエンドはコードネーム Nano Banana で、Gemini Web UI ではフロントの選択モデルに応じて画像生成バックエンドが切り替わる。Gemini はチャットインターフェース層で、内部の画像生成モデルが Nano Banana 系列。
  • 執筆時点 (2026年5月) で API (client.models.list()) で確認できる画像生成モデル:
    • gemini-2.5-flash-image ← 本記事 v9b の検証対象 (= 初代 Nano Banana)
    • gemini-3-pro-image-preview
    • gemini-3.1-flash-image-preview
    • nano-banana-pro-preview (= "Nano Banana Pro")
  • 本記事の Web UI 評価は aistudio.google.com の Gemini 3.1 Pro モードで生成。API 評価は v9b の gemini-2.5-flash-image snapshot。Web UI と API でモデル世代が異なる点に注意 (Web UI = 3.1 系の Nano Banana Pro 推測、API = 2.5 系の初代 Nano Banana)。

作業ログ: 2026-04-29 〜 04-30、Mac M1 Max 64GB / Diffusers 0.37.1 / peft 0.19.1 Qwen Full は 50 step / 1枚 93分 / 8枚 12時間、Lightning は 8 step / 1枚 10分 / 8枚 80分 前作: ローカルLLMで読める記事は書けるのか — 6モデル比較してみた