本記事は Mac でローカル画像生成 10モデル比較したら、最強候補が裏返った のスピンオフ。各モデル単独レビューの v6。

TL;DR

  • Flux.1 [dev] は Black Forest Labs の DiT 系 23GB モデル、写実度はローカル群でダントツのトップ
  • Mac M1 Max 64GB / Apple MPS で 1枚 約12分 (28 step / 1024px / guidance_scale=3.5)
  • 英文字描画は完璧、抽象アート・複雑構図も強い → 英語圏向け記事の挿絵に最適
  • 弱点は アジア食文化バイアス("ramen" → パクチー入り)漢字描画 NG(架空字)
  • ライセンスは Flux Non-Commercial — 商用は schnell (Apache 2.0) との使い分けが必要
  • 採用方針: 英語圏向け本命。アジア圏向けは Qwen-Image Lightning へ

なぜこのモデルを試したか

ローカル画像生成の現時点の最強候補として、ベンチマーク・SNS のレビュー・実利用者の評価のすべてが Flux dev に集中していた。「ローカルで Midjourney に最も近い」と謳われる。

期待していたこと:

  • 写実度: Stable Diffusion 系を超える
  • プロンプト忠実度: SDXL のような勝手な要素追加が無いはず
  • 英文字描画: SDXL 系より明確に良いと聞く

期待していなかったこと:

  • アジア要素の精度: そこまで気にされていない領域
  • 速度: 28 step / DiT は遅い覚悟

実際試したら、良い箇所は期待を超え、弱い箇所は期待を下回った。明確な「英語圏向け本命」モデルとして位置づけることになった。

環境セットアップ

pip install diffusers==0.37.1 torch==2.11.0 transformers

ロードコード:

from diffusers import FluxPipeline
import torch

pipe = FluxPipeline.from_pretrained(
    "black-forest-labs/FLUX.1-dev",
    torch_dtype=torch.bfloat16,
).to("mps")

image = pipe(
    prompt="...",
    num_inference_steps=28,
    guidance_scale=3.5,
    height=1024,
    width=1024,
).images[0]

ハード要件:

項目
Mac M1 Max / 64GB
GPU 制限 iogpu.wired_limit_mb=61440(60GB)
モデル 23GB (bf16)
1枚あたり 約12分 (28 step / 1024px / MPS)
HF gated repo 要申請 (black-forest-labs/FLUX.1-dev にアクセス権リクエスト)

HF gated repo の申請がブロッカー。同じ Black Forest Labs でも schnell は Apache 2.0 で誰でも落とせるが、dev は審査がある。サインアップ後数時間〜1日待ち。

iogpu.wired_limit_mb は SDXL 程度なら不要だが、Flux dev は MPS で 23GB 載せると swap に落ちやすい。最低 30GB 確保推奨。

8プロンプト全結果

# プロンプト 画像
01 a cute cat sitting on a wooden bench in a sunny park
02 a bowl of ramen with chashu and soft-boiled egg
03 a wooden sign with "LOCAL AI"
04 a developer's t-shirt with "M1 MAX 64GB" retro 80s style
05 a woman developer working at a laptop
06 a glowing AI brain made of circuits and neon
07 three robots playing chess in a sunlit library
08 a wooden izakaya sign with the kanji "居酒屋"

8枚合計の生成時間: 約 96分 (1枚 12分 × 8)。Qwen Full の 12時間と比べれば現実的だが、SDXL Turbo の 5秒 × 8 = 40秒からは遠い。

個別プロンプト評価

01 猫 — プロンプトに従わない、アニメ調になる

プロンプトに photorealistic と明示しているのに、アニメ・イラスト調になる。可愛い猫の絵、でも写真ではない。

Qwen Lightning (2025) Gemini (2025) Flux dev (2024)
Qwen Lightning cat Gemini cat Flux dev cat
実写、ストック写真として OK 「猫の写真」として完成、被写界深度・光が自然 アニメ・イラスト調に流れる

→ Flux dev の癖:動物・猫系プロンプトでアニメ・イラスト調に流れることがある。一方で人物・物体・風景は実写としてしっかり描けるので(後述の 05 女性開発者参照)、サブジェクト依存。Stable Diffusion 系には無かった現象で、学習データに高品質な動物イラストが多く含まれている可能性。guidance_scale を上げると緩和する。

02 ラーメン — 雰囲気は最高、でもパクチー入り

写真品質は文句なし。木製テーブル、湯気、麺のテクスチャ、すべてレベルが高い。

問題は具材。パクチー入りチャーシューの隣に卵2個(プロンプトは "soft-boiled egg" 単数形)。これは「アジア料理ごちゃ混ぜバイアス」の典型例。学習データで「ramen」「pho」「laksa」が同じカテゴリに混じっている。

Qwen Lightning (2025) Gemini (2025) Flux dev (2024)
Qwen Lightning ramen Gemini ramen Flux dev ramen
緑野菜は微妙、それ以外は日本ラーメン ナルト・メンマ・小皿まで「ラーメン屋の写真」 パクチー + 卵2個(東南アジア混合)

→ 日本人読者には一発で見抜かれる違和感。海外の読者は気付かないかもしれないが、日本語ブログには使えない。

03 LOCAL AI — 完璧、夕陽のレンズフレアまで

木の看板に "LOCAL AI" の文字、夕陽の草原、レンズフレア。英文字描画は文句なし

これは Flux dev の真骨頂。SDXL 系では OOLDD AIXNIA のような架空語になっていた検証ポイントで、Flux dev は完璧に綴る。英文字を含むデザインなら Flux dev 一択

Gemini と並べても遜色ない:

Gemini (2025) Flux dev (2024)
Gemini LOCAL AI Flux dev LOCAL AI
文字完璧、シーン作り込みは Gemini が一段上 文字完璧、夕陽レンズフレア

04 M1 MAX 64GB Tシャツ — 80s シンセウェーブ完璧

Tシャツに "M1" "MAX" "64GB" がネオンピンク・オレンジで描かれ、黒バックに星、シンセウェーブ調のグリッド。全テキスト読める、80年代のスタイル指定にも完全に応えてる

Qwen Lightning が "MAX" を歪ませて誤魔化していたのと対照的。スタイル指定 + 英文字 + 数字の3点セットは Flux dev のホームグラウンド

05 女性開発者 — 実写として完璧、文句なし

開発者の女性、ラップトップ、紙コップ、観葉植物、ノート。指問題なし、PC は机に設置、小道具まで揃って、表情・肌の質感も実写としてしっかり描けている

01 猫がアニメ調に流れたのと対照的に、人物プロンプトでは Flux dev は実写としてちゃんと出してくる。サブジェクト依存の手癖で、動物・猫系では崩れることがあるが、人物・物体・風景は安定。

Qwen Lightning (2025) Gemini (2025) Flux dev (2024)
Qwen Lightning woman Gemini woman Flux dev woman
実写、ストック写真 共同オフィスの撮影現場、Clean Code 本まで 実写、小道具まで充実、文句なし

06 AI brain — ネオン回路、写実度高い

サイバーパンク調のネオン回路の脳。立体感、光の粒子、解像度すべて高い。抽象アート系では Flux dev がローカルトップ。Qwen Lightning は同プロンプトでディテール感が薄かった。

Qwen Lightning (2025) Gemini (2025) Flux dev (2024)
Qwen Lightning AI brain Gemini AI brain Flux dev AI brain
実用域だが解像度感は劣る キーアート即採用レベル、立体感が桁違い ローカル中トップ、ネオン粒子・光の走り

→ サイバーパンク・ネオン系のローカル筆頭は Flux dev。クラウドに踏み込めば Gemini が更に一段抜くが、ローカル完結なら Flux dev 一択

07 ロボとチェス — 多要素配置 OK

3体のロボット、チェス盤、本棚、暖色光、窓からの光。プロンプトの全要素を破綻なく配置できる。SD 3.5 Medium で「2体に減らす」退化が起きた領域 (v4 参照) を、Flux dev は破綻なくこなす。

Qwen Lightning (2025) Gemini (2025) Flux dev (2024)
Qwen Lightning robots Gemini robots Flux dev robots
3体OK、表情やや漫画調 3世代のロボット史対話、観戦者・古い革表紙の本まで 3体OK、表情・手・チェス駒のディテール充実

→ Flux dev は数の指定 + 表情ディテールでローカル群の中で頭一つ抜ける。Gemini はさらに「シナリオ」を作ってくるが、ローカル完結なら Flux dev で十分。

08 居酒屋 — 京都町家風、別格の雰囲気、ただし致命的な文化誤読

京都町家のような佇まい、提灯、夜の路地、雨上がりの石畳。雰囲気は別格

問題が2つある。

(1) 看板の漢字が架空字: プロンプトの「居酒屋」を再現しようとした結果、「典桔」のような架空字になる。Flux dev は漢字を「文字」ではなく「装飾的な記号」として処理している。

(2) より致命的な文化誤読: 「居酒屋」は大衆向けの酒場なのに、Flux dev は京都町家風(料亭の意匠)で出してくる。これは別物。

居酒屋(大衆酒場)と料亭(高級日本料理店)は、日本人にとって明確に異なる業態。Flux dev は両者を区別できず、「料理 + 提灯 = 京都町家」という単一解釈に流れる。これは「日本らしさ ≒ 京都らしさ」というステレオタイプで学習データが構成されているため。

国レベルの偏向(パクチー入りラーメン)より一段深い、「国内文化レベルでの単一解釈」問題。LAION の英語キャプションが「Japanese restaurant = traditional Kyoto-style」のように粗く紐付けられている結果。海外読者にはエキゾチックに映るかもしれないが、日本人読者には「いや、これ居酒屋じゃなくて料亭だろ」となる致命的なミス。

Qwen Lightning (2025) Gemini (2025) Flux dev (2024)
Qwen Lightning izakaya Gemini izakaya Flux dev izakaya
漢字・店構え・暖色照明 完璧 漢字・石畳の光・周辺ストーリーまで完璧 雰囲気別格、漢字「典桔」風の架空字

雰囲気で勝って、漢字で負ける。日本語ブログでは使えない、英語向け「日本テイストの看板」風として使うなら可。

良かった点

  1. 写実度ローカルトップ: 01 猫以外のプロンプト忠実度は問題なし、SDXL 系を明確に超える
  2. 英文字描画完璧: "LOCAL AI" / "M1 MAX 64GB" すべて読める形で出る
  3. 抽象アート系・複雑構図に強い: AI brain・ロボとチェスでローカル群を引き離す
  4. プロンプト忠実度: SDXL のような「勝手にマグカップ追加」が無い
  5. 80s シンセウェーブ等のスタイル指定がしっかり通る

悪かった点

  1. アジア食文化バイアス: ラーメン → パクチー、寿司 → カリフォルニア風、になりがち
  2. 漢字描画 NG: 「居酒屋」を架空字にする、装飾記号として処理
  3. 動物・猫系でアニメ調に流れることがある: 猫プロンプトで photorealistic 指定が無視される。人物・物体・風景は実写で安定
  4. 1枚 12分は遅い: Apple MPS では NVIDIA の 7-8倍遅い (RTX 4090 で 1分台)
  5. Non-Commercial ライセンス: 商用利用には Flux schnell (Apache 2.0) との使い分け要

このモデルが活きるユースケース

要点:英語圏最強、アジアテイストは苦手。本記事の採用方針 「英語圏 = Flux dev / アジア圏 = Qwen Lightning」 の前者を担当する本命モデル。

  • 英語圏向け記事の挿絵(個人利用): 写実度・英文字・抽象表現・スタイル指定すべて強い、ローカルで Gemini に最も近い品質
  • テクニカル記事の図解: AI / 開発・ガジェット系のキービジュアル、80s シンセウェーブやサイバーパンク調の指定が完全反映
  • ストックフォト的な人物カット: 実写としてしっかり描ける、Gemini に次ぐ品質
  • 複合キーワードを含むTシャツ・看板デザイン: schnell では消える "M1" のような型番も dev では完璧
  • ⚠️ 24GB GPU で動かす(RTX 3090 / 4090): モデル単体 23GB + T5-XXL + VAE で24GB枠ギリギリ、実質オフロード前提。Mac M1 Max 64GB なら余裕、NVIDIA の中堅 GPU には厳しい
  • 日本語・中国語の看板や標識: 漢字は「典桔」のような架空字、京都町家風の文化誤読も出る
  • アジア料理の正確な描写: パクチー入りラーメン、ハム風チャーシュー
  • 商用利用: Non-Commercial、商用は schnell (Apache 2.0) or Lightning (Apache 2.0) へ
  • 大量生成: 1枚 12分は素材ライブラリ作りには遅い、bulk なら schnell へ

ハマりポイント / Tips

1. HF gated repo の申請を忘れない

# これが通らない場合は huggingface.co でアクセス権申請
huggingface-cli login

black-forest-labs/FLUX.1-dev のページで "Access repository" ボタン。承認まで数時間〜1日。schnell は不要なので dev だけ申請忘れがちな罠

2. guidance_scale=3.5 は意外と低い

SDXL 系の感覚で 7.5 などにすると 写実度が崩れる。Flux dev は guidance に敏感で、デフォルトの 3.5 を中心に微調整するのが安全。アニメ調を抑えたいときは 4.0-4.5 程度まで上げる。

3. photorealistic が効かない時の対処

プロンプトの最初に置き、追加で realistic photography, shot on Canon EOS R5, natural lighting のような撮影機材ワードを足すと写実寄りになる。それでもダメなら seed を変える。

4. アジア要素はそもそも別モデルへ

ラーメン・寿司・着物・漢字看板など、アジアの文化記号を含むプロンプトは Flux dev に投げない。Qwen-Image Lightning が同じハードで 10分で出してくれる。役割分担。

5. 12分の生成は寝てる間に回す

8プロンプト揃えるのに 96分。compare.py のような比較スクリプトで caffeinate -i を噛ませて、シャワー浴びてる間 + 食事中 で1セット。リアルタイムには厳しい。

caffeinate -i ./venv/bin/python compare.py flux_dev

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シリーズ内の関連記事:

次作 (構想):

  • 第3弾: AI が描く各国料理 — 学習データの地理的偏向を可視化(draft)

検証環境: Mac M1 Max 64GB / macOS 25.4 / Python 3.14 / Diffusers 0.37.1 / PyTorch 2.11 (MPS) 作業ログ: 2026-04-29、Flux.1 [dev] (black-forest-labs/FLUX.1-dev, 28-step / guidance 3.5)