本記事は Mac でローカル画像生成 10モデル比較したら、最強候補が裏返った のスピンオフ。各モデル単独レビューの v8。

TL;DR

  • Qwen-Image Lightning は本家 Qwen-Image (Alibaba 20B) に lightx2v 公開の 8-step 蒸留 LoRA を載せたもの
  • Mac M1 Max 64GB / Apple MPS で 1枚 約10分、本家 Full (50-step / 1枚 93分) の 9倍速
  • 驚いたのは速度ではなく品質。指の数・物体配置・店構えの表現が Full より良いプロンプトがある
  • Full の文字誤魔化し手癖("I" 省略・"MAX" 歪ませ)も Lightning では消える
  • アジア圏向け記事の挿絵ならローカル最強候補。Apache 2.0 で商用 OK

なぜこのモデルを試したか

本家 Qwen-Image は Mac 64GB で動くローカルモデルとして、漢字描画アジア食文化への対応が期待できる唯一の選択肢だった。試してみたら期待通り「居酒屋」3文字を縦書きで書けたし、ラーメンにパクチーも入らなかった。

でも代償が 1枚 93分。8プロンプト揃えるのに 12時間。寝てる間に走らせる前提でも、「明日の朝までに2案ほしい」みたいな運用には耐えない。

そこで lightx2v が公開している Qwen-Image-Lightning-8steps-V1.0.safetensors を試した。8 step に蒸留した LoRA を Full のベースモデルに載せるだけ。

蒸留版は普通「速度のために品質を捨てる」もの。前作の SDXL Turbo (1-step) で散々見た。だから期待値は「Full の劣化版で 5〜6倍速」程度だった。

結果は予想を裏切った。9倍速 + 一部のプロンプトで品質向上

環境セットアップ

# Python 3.14 (3.10+ なら可)
python -m venv venv && source venv/bin/activate

pip install diffusers==0.37.1 torch==2.11.0 transformers
pip install peft  # ★ LoRA 適用に必要、無いと LOAD FAILED で死ぬ

ロードコード:

from diffusers import QwenImagePipeline
import torch

pipe = QwenImagePipeline.from_pretrained(
    "Qwen/Qwen-Image",
    torch_dtype=torch.bfloat16,
).to("mps")

pipe.load_lora_weights(
    "lightx2v/Qwen-Image-Lightning",
    weight_name="Qwen-Image-Lightning-8steps-V1.0.safetensors",
)

image = pipe(
    prompt="...",
    num_inference_steps=8,
    true_cfg_scale=1.0,  # Lightning は CFG 不要 (重要)
    height=1024,
    width=1024,
).images[0]

true_cfg_scale=1.0 がポイント。Full は 4.0 だが、Lightning は CFG なしで動く設計。ここを Full と同じ 4.0 にすると Lightning の意味がなくなるので注意。

ハード要件:

項目
Mac M1 Max / 64GB
GPU 制限 iogpu.wired_limit_mb=61440(60GB)
ベースモデル 40GB (bf16)
LoRA 数十MB
1枚あたり 約10分 (8 step / 1024px / MPS)

iogpu.wired_limit_mb を上げないと bf16 40GB が乗らない。デフォルト (システム任せ) だと swap に落ちて10分どころでなくなる。

8プロンプト全結果

# プロンプト 画像
01 a cute cat sitting on a wooden bench in a sunny park
02 a bowl of ramen with chashu and soft-boiled egg
03 a wooden sign with "LOCAL AI"
04 a developer's t-shirt with "M1 MAX 64GB" retro 80s style
05 a woman developer working at a laptop
06 a glowing AI brain made of circuits and neon
07 three robots playing chess in a sunlit library
08 a wooden izakaya sign with the kanji "居酒屋"

8枚合計の生成時間: 80.8 分(Full は 12時間)。

個別プロンプト評価

01 猫 — ローカル中トップレベルの写実度

ベンチに座る猫。光の当たり方、毛並み、背景ボケ、すべて自然。ストック写真として違和感ない品質(ただし若干イラスト感は残る)。

Flux dev が同じプロンプトでアニメ調に流れたのと対照的。Flux dev は写実プロンプト指定でも「美人系」「アニメ系」に手癖が出るが、Qwen Lightning は若干イラスト感はあるものの引で見ると実写として通用する。

Flux dev (2024) Qwen Full (2025) Qwen Lightning (2025)
Flux dev cat Qwen Full cat Qwen Lightning cat
アニメ・イラスト調に流れる 実写、毛並みあり ほぼ実写、よく見るとイラストっぽさあり。プロンプト次第でなんとかなりそう

02 ラーメン — パクチー入りなし、緑の謎野菜だけが残念

チャーシュー、卵、海苔、ごちゃごちゃしないシンプルな構成。Flux dev のパクチー入り問題は完全回避

ただし緑の謎野菜(ほうれん草?菜っ葉?)が一つ乗ってる。日本のラーメン的にはこの野菜は微妙。Alibaba の学習データに「中華風湯麺」が混じってる可能性。

Flux dev (2024) Gemini (2025) Qwen Full (2025) Qwen Lightning (2025)
Flux dev ramen Gemini ramen Qwen Full ramen Qwen Lightning ramen
パクチー入り(東南アジア混合) ナルト・メンマ・小皿まで「ラーメン屋の写真」 パクチー無し ✓ シンプル 緑の謎野菜だけ気になる、それ以外完璧

03 LOCAL AI — Full の誤魔化しが消えて完璧

"LOCAL AI" 全文字、はっきり読める形で出る。木の看板、夕陽の草原、被写界深度も自然。

ここが Full からの大きな改善ポイント。Full では "AI" の "I" を省略してロゴ風にぼかす手癖が出ていたが、Lightning ではこの手癖が消える

Qwen Full (2025) Qwen Lightning (2025)
Qwen Full LOCAL AI Qwen Lightning LOCAL AI
"AI" の "I" 省略、誤魔化し "LOCAL AI" 完璧、Full の手癖が消える

これは想定外だった。蒸留版は「速度のために品質を捨てる」のが普通で、文字描画はその犠牲になりやすい部分。Lightning では逆。8-step に最適化された LoRA がベースモデルの文字描画スキルを引き出している、と考えるしかない。

04 M1 MAX 64GB Tシャツ — こちらも誤魔化しが消えた

紺Tシャツに "M1 MAX 64GB" がレインボーグラデーションでくっきり描かれる。"MAX" の3文字も歪まず読める。Full では "MAX" を歪ませる手癖が出ていたのが、Lightning では消えた。

Qwen Full (2025) Qwen Lightning (2025)
Qwen Full M1 MAX Qwen Lightning M1 MAX
Tシャツ完璧、"MAX" 歪み "M1 MAX 64GB" 全部完璧

03 と合わせて、「Qwen 系のテキスト誤魔化しは Full 固有の問題で、Lightning では発現しない」ことが確認できる。これが本記事のもう一つの核。「過剰ステップで誤魔化しが出る現象」と言ってもいい。

05 女性開発者 — Full から大幅改善、Full vs Lightning の決定的差

Full では PC が宙に浮いて、左手の指が不自然だったのが、Lightning では:

  • 指5本きっちり
  • PC は机にちゃんと置かれている
  • マグカップを持つ手の位置関係も自然
  • 後ろ姿気味の構図でアスペクトが整っている
Qwen Full (2025) Qwen Lightning (2025)
Qwen Full woman Qwen Lightning woman
PC が宙に浮き、指がおかしい 指 OK・PC 設置 OK・自然な構図

50 step かけて崩れたものが、8 step で安定した。これが本記事の核。

06 AI brain — 悪くない、Full からは改善

ネオン回路の脳、シアン・マゼンタの配色、立体感あり、サイバーパンク調はしっかり成立。中央に "AI" の文字が回路の一部として埋め込まれていて、これも自然な追加。

Full 版より解像度・色のメリハリが向上している。Flux dev の同プロンプトと比べるとやや解像度感では負けるものの、抽象アート系として実用域には入る。

Flux dev (2024) Qwen Full (2025) Qwen Lightning (2025)
Flux dev AI brain Qwen Full AI brain Qwen Lightning AI brain
粒子・光の走り、解像度感が圧倒的(ローカル中トップ) ディテール感薄め Full から改善、実用域、"AI" 文字も自然

07 ロボとチェス — 構図 OK、表情はやや稚拙

3体ロボットが図書館でチェス。光の差し方・本棚・チェス盤の構図は OK。ただしロボットの表情がやや漫画調で、写実度では Flux dev / Gemini に負ける。

Flux dev (2024) Qwen Full (2025) Qwen Lightning (2025)
Flux dev robots Qwen Full robots Qwen Lightning robots
数 OK、表情・手・チェス駒のディテール充実 数 OK、表情漫画調 数 OK、表情やや改善

数の指定は Qwen 系・Flux 系どちらも通る領域。SD 3.5 で「2体に減らす」退化が起きる場面 (v4 参照、SDXL base は実は 3体OK) を、Qwen Lightning と Flux dev は両方破綻なくこなす。表情のリアリティだけ Flux dev が頭一つ抜ける。

08 居酒屋 — Full から大幅改善、ローカルで唯一漢字 + 雰囲気を両立

Full では漢字は書けたが店構えが薄かったのが、Lightning では:

  • 「居酒屋」3文字、縦書きで完璧
  • 提灯の質感、暖色照明
  • 木の店構え、日本の路地裏の雰囲気
  • 看板の墨の刷毛感
Qwen Full (2025) Qwen Lightning (2025)
Qwen Full izakaya Qwen Lightning izakaya
漢字 OK だが店構えが薄い 漢字・店構え・暖色照明すべて完璧

ローカルで「居酒屋」3文字 + 雰囲気を両立できるのは、Lightning だけ。SD 系は架空字、Flux dev も架空字「典桔」、Full は雰囲気弱め。

良かった点

  1. 過剰ステップで崩れる現象を回避: 50 step → 8 step でむしろ品質が上がるプロンプトがある(女性開発者・居酒屋)
  2. 9倍速: 1枚 10分は実用域。8枚 80分なら昼休みに比較セットが作れる
  3. 漢字 + アジア食文化: ローカルで唯一、日本人が違和感を持たない絵が出る
  4. Apache 2.0: 商用 OK、Flux schnell と並ぶライセンス上の優等生
  5. ベースモデルは Full と同じ: 既に Full の重みを落としていれば LoRA だけ追加で済む

悪かった点

  1. 40GB ベースモデルの初回ダウンロード: HuggingFace から落とすのに時間がかかる(光回線で30分〜1時間)
  2. 緑の謎野菜: ラーメンに毎回乗る。中華風湯麺の学習バイアス(Full でも同じ)
  3. 抽象アート系は Flux dev にやや負ける: AI brain は実用域だが、解像度感・粒子のキラキラ感は Flux dev が上
  4. true_cfg_scale=1.0 を忘れると死ぬ: Full と同じ 4.0 のままだと Lightning の意味なし

このモデルが活きるユースケース

要点:アジア圏最強モデル。本記事の採用方針 「英語圏 = Flux dev / アジア圏 = Qwen Lightning」 の後者を担当する本命モデル。Lightning は Full の劣化版ではなく、Full の手癖を消した完成版として位置付け。

  • アジア圏向け記事の挿絵: 日本語ブログ、アジア料理ブログ、和風建築の解説 — ローカルで唯一実用域
  • 漢字を含む看板・標識の生成: ローカルで「居酒屋」3文字を完璧に書けるのは Qwen 系のみ
  • アジア食文化の正確な描写: パクチー入りラーメンにならない(Flux 系のバイアスを回避)
  • 重要な英文字を含むデザイン: "LOCAL AI" / "M1 MAX 64GB" すべて読める、Full の誤魔化し手癖が Lightning で消えるので Flux dev と並ぶ品質
  • ストック写真的な開発者シーン: 指5本・PC設置 OK、Gemini ほどではないが「キレイな素材」として通用
  • Apache 2.0 で商用OK: 同じ商用OK枠の Flux schnell より明確に上位(漢字が描ける)
  • ⚠️ 40GB ベースモデル: Mac M1 Max 64GB / wired_limit 60GB でギリギリ。NVIDIA なら 80GB 級GPU 推奨
  • ⚠️ 抽象アート・サイバーパンク調: Lightning でも実用域だが、解像度感を最優先するなら Flux dev
  • 対話型編集: 「ここを赤くして」が通じない(Qwen-Image-Edit という別モデルが要る)

ハマりポイント / Tips

1. peft が無いと LOAD FAILED

!! LOAD FAILED: PEFT backend is required for this method.

load_lora_weights() 呼ぶ前に pip install peft 必須。Diffusers 単体では LoRA 適用ができない。これで最初の試行が 1.3分で死んだ

2. true_cfg_scale=1.0 を忘れない

Lightning は CFG なしで動く設計。Full と同じ 4.0 のままだと、絵は出るが Lightning らしい安定性が出ない。LoRA の意義が消える。

3. 1枚目だけ遅い

プロンプト
01 cat 326.8
02 ramen 327.0
03 LOCAL AI (テキスト系) 606.8
04 M1 MAX (テキスト系) 800.8
05 woman dev 483.5
06 AI brain 712.7
07 robots chess 654.0
08 izakaya 763.5

テキスト系プロンプト(03, 04)が他より2倍重い。Attention レイヤーがテキスト座標の解像に時間を使ってる説。

4. 出力が macOS のスリープで止まる

8枚生成中に Mac がスリープすると MPS が落ちる。caffeinate -i でスリープ防止しながら走らせるのが安全:

caffeinate -i ./venv/bin/python compare.py qwen_image_lightning

5. Full と Lightning の同居

ベースモデル40GB は同じなので、ディスク容量上は Full + Lightning でも 40GB のまま。LoRA 数十MB だけ追加。

比較記事と次のモデルへ

シリーズ内の関連記事:

次作 (構想):

  • 第3弾: AI が描く各国料理 — 学習データの地理的偏向を可視化(draft)

検証環境: Mac M1 Max 64GB / macOS 25.4 / Python 3.14 / Diffusers 0.37.1 / peft 0.19.1 / PyTorch 2.11 (MPS) 作業ログ: 2026-04-30、Qwen-Image Lightning (lightx2v/Qwen-Image-Lightning, 8steps V1.0)