本記事は Mac でローカル画像生成 10モデル比較したら、最強候補が裏返った のスピンオフ。各モデル単独レビューの v4。

TL;DR

  • Stable Diffusion 3.5 Medium は Stability AI が 2024年に公開した DiT 系の中量級モデル
  • Mac M1 Max 64GB / Apple MPS で 1枚 約5分 (28 step / 1024px / bf16)、ロード 4分以上
  • 「サムネ評価では合格、原寸評価で減点」の典型。DiT のディテール再現が中途半端
  • ライセンスは Stability Community License、月収 $1M 以下なら商用 OK
  • 採用方針: 記事のサムネ・SNS 用途は OK、原寸の挿絵には弱い。Flux 系 / Qwen 系の登場で立ち位置が苦しい

なぜこのモデルを試したか

DiT (Diffusion Transformer) 系のローカルモデルとして、Stability AI 系の最新作。「SD 3.5 ならどこまで進化したか」という Stability AI への期待値で1枠割り当てた。

期待:

  • DiT への移行による解像度・構図の改善
  • T5-XXL text encoder(Flux 系と同じ)による文字描画の改善
  • SDXL の「要素追加癖」がなくなっているか

期待外れだった点:

  • 5GB しかないのに 1枚 5分かかる: bf16 + DiT の Apple MPS 上の遅さ
  • DiT 系で 1024 学習でも、よく見ると変: 画素ベースだと精細だが、構造的な「人体・物体の配置」がぎこちない
  • ライセンスがやや複雑: Stability Community License は「無料商用 OK だが月収 $1M 超で要ライセンス」

結果: 「中堅安定枠」。SDXL base の正統進化ではあるが、Flux 系の登場でこの中量級枠は苦しい。

環境セットアップ

pip install diffusers==0.37.1 torch==2.11.0 transformers

ロードコード:

from diffusers import StableDiffusion3Pipeline
import torch

pipe = StableDiffusion3Pipeline.from_pretrained(
    "stabilityai/stable-diffusion-3.5-medium",
    torch_dtype=torch.bfloat16,  # ★ bf16 推奨
).to("mps")

image = pipe(
    prompt="...",
    num_inference_steps=28,
    guidance_scale=4.5,
    height=1024,
    width=1024,
).images[0]

ハード要件:

項目
Mac M1 Max / 64GB
モデル 5GB (bf16)
解像度 1024x1024
1枚あたり 約5分 (28 step / 1024px / MPS)
ロード時間 約4分(モデル + T5-XXL + 構成全部読み込み)
HF gated repo 要申請(Stability AI のライセンス同意が必要)

stabilityai/stable-diffusion-3.5-medium は HF で gated repo。アクセス権申請後、数時間〜1日待ち。

8プロンプト全結果

# プロンプト 画像 生成時間
01 a cute cat sitting on a wooden bench in a sunny park 5分38秒
02 a bowl of ramen with chashu and soft-boiled egg 5分1秒
03 a wooden sign with "LOCAL AI" 5分0秒
04 a developer's t-shirt with "M1 MAX 64GB" retro 80s style 4分57秒
05 a woman developer working at a laptop 4分57秒
06 a glowing AI brain made of circuits and neon 4分57秒
07 three robots playing chess in a sunlit library 5分2秒
08 a wooden izakaya sign with the kanji "居酒屋" 5分4秒

8枚合計 約 40分。Flux dev (96分) より速いが、SDXL base (8分) より遅い。「中量級なのに重い」のが SD 3.5 の持ち味。

個別プロンプト評価

01 猫 — 結構いい、サムネレベル合格

縞猫、ベンチ、自然光、被写界深度。SDXL base / SD 1.5 を明確に超える写実度。サムネとしては十分使える。原寸でズームすると毛並みのテクスチャがやや甘い。

Flux dev (2024) Qwen Lightning (2025) SD 3.5 Medium (2024)
Flux dev cat Qwen Lightning cat SD 3.5 cat
アニメ・イラスト調に流れる ほぼ実写、若干イラスト感あり サムネOK、原寸で毛並み甘い

02 ラーメン — チャーシューがハム/サラミ風

パクチーなし・卵1個 ✓ 文化的に健闘、ただしチャーシューがハム/サラミ風で煮込み感ゼロ。「日本のラーメン」の雰囲気は出ているが、食材の質感で「西洋系の解釈」が混じる。

Flux dev (2024) Qwen Lightning (2025) SD 3.5 Medium (2024)
Flux dev ramen Qwen Lightning ramen SD 3.5 ramen
パクチー入り(東南アジア混合) 緑野菜だけ気になる、それ以外完璧 チャーシューがハム/サラミ風

03 LOCAL AI — L LOCAL AI という余分な "L" 付き

看板の文字は L LOCAL AI という風に 先頭に余分な "L" が付く。SDXL base の「要素追加癖」が SD 3.5 にも引き継がれている。文字描画自体は SD 1.5 比で大きく改善したが、「もう1個追加する癖」が消えていない。

SDXL base (2023) Flux dev (2024) SD 3.5 Medium (2024)
SDXL base LOCAL AI Flux dev LOCAL AI SD 3.5 LOCAL AI
"LOCAL LL" に崩れる "LOCAL AI" 完璧、レンズフレアまで 余分な "L" が前に付く

SDXL → SD 3.5 → Flux 系 で文字描画が段階的に改善する流れ。ただし SD 3.5 は「綴れるけど追加する」段階で止まっている。

04 M1 MAX 64GB Tシャツ — Tシャツが消えてロゴだけ浮く

プロンプトは "developer's t-shirt" なのに、出てきたのは 青背景にロゴだけ浮いている画像Tシャツが完全に消失している。SDXL base のロボットキャラ化と同じ症状で、「Tシャツに文字をプリント」というプロンプト構造を text encoder が解釈できない典型例。

文字も:

  • "M1" → "M1 1" に(数字が増殖)
  • "MAX" → 反映 ✓
  • "64GB" → 反映 ✓
SDXL base (2023) Flux dev (2024) SD 3.5 Medium (2024)
SDXL base M1 MAX tee Flux dev M1 MAX tee SD 3.5 M1 MAX
Tシャツ消失 → ロボットキャラ Tシャツに完璧プリント、80s シンセウェーブ Tシャツ消失 → 青背景にロゴ

→ SDXL 系 / SD 3.x で「t-shirt + text」プロンプトが崩れるのは構造的問題。Flux 系の T5-XXL になって初めて「Tシャツに何かをプリント」が解釈できる

05 女性開発者 — 「サムネ OK、ズームすると変」の典型

一見まとも。原寸でズームすると:

  • 紙コップを ノートPC のキーボード上に置いてる(液体こぼしたら数十万円)
  • コーヒーカップを持つ手の 指がコップに刺さって貫通してる
  • 髪の毛のディテールがやや甘い
Qwen Lightning (2025) Flux dev (2024) SD 3.5 Medium (2024)
Qwen Lightning woman Flux dev woman SD 3.5 woman
ストック写真として OK 実写として完璧 サムネ OK、原寸 NG(コップ on PC、指貫通)

これが「サムネ OK、ズームすると変」。SNS のサムネ表示や記事のヘッダーで縮小されると問題が見えないが、原寸利用で減点。

06 AI brain — 健闘、ただし Flux dev には負ける

ネオン回路の脳。SDXL base / Flux dev 比で中位。雰囲気は出るが、解像度感・粒子感は Flux dev が圧倒的。

Flux dev (2024) Qwen Lightning (2025) SD 3.5 Medium (2024)
Flux dev AI brain Qwen Lightning AI brain SD 3.5 AI brain
粒子・光の走り、ローカル中トップ 実用域、Full から改善 雰囲気あり、SDXL base よりは綺麗

→ 抽象アート系では SD 3.5 がローカル中位に位置する。最強の Flux dev には粒子感・解像度感で負けるが、SDXL base よりは綺麗。サイバーパンク・ネオン系を最優先するなら Flux dev へ。

07 ロボとチェス — 数を減らす(3→2)、SDXL base から退化

プロンプトは "three robots" だが 2体のロボットSDXL base ではちゃんと 3体描けていた領域なのに、後継の SD 3.5 Medium で逆に 2体に減ってしまう。T5-XXL を使っているにも関わらず

SDXL base (2023) Flux dev (2024) SD 3.5 Medium (2024)
SDXL base robots Flux dev robots SD 3.5 robots
3体ちゃんと描ける 3体(数の指定が通る、表情ディテールも充実) 2体(数を減らす、退化)

→ T5-XXL は SD 3.5 と Flux 系で同じ。ただし Flux 系は数の指定がしっかり通る(3体出る)。SD 3.5 で数が崩れるのは、text encoder ではなく DiT 側のキャパシティの問題と推測。前世代の SDXL base からの「退化」現象として記憶しておくべきポイント。

08 居酒屋 — 雰囲気は良いが架空字「未学夏」

雰囲気のある木造の建物、提灯、夜の路地。SDXL base よりやや雰囲気が良いが、看板の漢字は 「未学夏」みたいな架空字。漢字描画は依然として Qwen 系の登場まで解決されない領域。

Flux dev (2024) Qwen Lightning (2025) SD 3.5 Medium (2024)
Flux dev izakaya Qwen Lightning izakaya SD 3.5 izakaya
京都町家風(料亭の意匠、文化誤読)+ 架空字「典桔」 漢字「居酒屋」完璧、店構え・暖色照明 完成 雰囲気あり、漢字「未学夏」風の架空字

良かった点

  1. DiT への移行で構図が改善: SDXL の「要素追加」は減った(ただし完全には消えていない)
  2. T5-XXL による文字描画の進化: SDXL base / SD 1.5 比で明確に綺麗
  3. 抽象アート系で健闘: AI brain、サイバーパンク調はそれなりに出る
  4. 5GB の中量級: Mac の他用途と共存できる重さ
  5. Stability Community License: 月収 $1M 以下なら商用 OK(ほとんどの個人・中小には十分)

悪かった点

  1. 「サムネ OK、ズームすると変」: 5 女性開発者のコップ on PC、指貫通など
  2. 5GB なのに 1枚 5分: Apple MPS で bf16 が遅い、効率が悪い
  3. 要素追加癖が残る: "L LOCAL AI" の余分な L、ロボット数を減らす
  4. アジア要素は依然弱い: 漢字「未学夏」、ラーメンのチャーシューがハム
  5. Flux 系の登場で立ち位置が苦しい: Flux schnell が同サイズで Apache 2.0、品質も高い

このモデルが活きるユースケース

率直に:SD 3.5 Medium のクオリティは、2026年の基準で実用域じゃない

  • 02 ラーメンのチャーシューがハム/サラミ風で煮込み感ゼロ
  • 03 LOCAL AI に余分な "L" が付く
  • 04 でTシャツが消えてロゴだけ浮く
  • 05 でコップが PC の上指がコップを貫通
  • 07 で「3体」を勝手に「2体」に減らす
  • 08 漢字が「未学夏」みたいな架空字
  • 1枚 5分かかる(Flux schnell の 2.5倍、Qwen Lightning と同等)

これらは Flux schnell / Flux dev / Qwen Lightning では発生しない問題で、SD 3.5 Medium を「現代の挿絵候補」として使う場面は無い。それでも使う理由を挙げるなら:

  • SNS のサムネ・記事のヘッダー画像: 縮小すれば原寸の問題は見えない、Flux 系より軽量
  • 5GB の中量級: VRAM 制約のある環境で Flux 系 (23GB) が動かないとき
  • 抽象アート・キービジュアル: 06 AI brain は Flux dev に劣るが SDXL base よりは綺麗
  • 記事の挿絵(原寸): ズームすると変、Flux dev / Qwen Lightning へ
  • 本記事の採用方針に入る: 採用方針(英語圏 = Flux dev / アジア圏 = Qwen Lightning)に SD 3.5 が入るシーンは無い

ハマりポイント / Tips

1. bf16 を必ず指定する

# ❌ fp16 だと一部のレイヤーで精度足りず崩れる
pipe = StableDiffusion3Pipeline.from_pretrained(model_id, torch_dtype=torch.float16)

# ✅ bf16 が SD 3.5 の標準
pipe = StableDiffusion3Pipeline.from_pretrained(model_id, torch_dtype=torch.bfloat16)

SD 3.5 は bf16 学習。fp16 で動かすと一部の絵で品質が落ちる。Apple MPS で bf16 は遅いが、品質を取るなら必須。

2. ロードに 4分かかることを覚悟する

T5-XXL を含むコンポーネントが重く、初回ロードに4分以上かかる。スクリプト起動の度にこれを払うので、複数プロンプトを処理する場合は 1セッションで一気に回す。

3. HF gated repo の申請を忘れない

stabilityai/stable-diffusion-3.5-medium は HF で gated。Hugging Face にログインしてアクセス権申請 → 数時間〜1日。Flux dev と同じ罠。

4. ライセンスの罠: Stability Community License

無料商用 OK だが、月収 $1M 超は別途エンタープライズライセンス必要。個人ブログ・中小事業なら問題ないが、大規模商用には注意。

5. SD 3 / SD 3.5 / SD 3.5 Large の関係

モデル サイズ 公開時期 立ち位置
SD 3 8GB 2024年6月 解剖学崩壊で炎上、廃止
SD 3.5 Medium 5GB 2024年10月 本記事の対象、安定
SD 3.5 Large 17GB 2024年10月 高解像度版、本記事範囲外

SD 3 を試そうとして SD 3.5 に着地するのが正解。SD 3 は人物・解剖学が酷い結果になり、SD 3.5 で改善された経緯がある。

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検証環境: Mac M1 Max 64GB / macOS 25.4 / Python 3.14 / Diffusers 0.37.1 / PyTorch 2.11 (MPS) 作業ログ: 2026-04-29、SD 3.5 Medium (stabilityai/stable-diffusion-3.5-medium, 28-step / guidance 4.5 / bf16 / 1024px)