本記事は Mac でローカル画像生成 10モデル比較したら、最強候補が裏返った のスピンオフ。各モデル単独レビューの v1。

TL;DR

  • Stable Diffusion 1.5 は 2022年公開、ローカル画像生成の祖となったモデル
  • Mac M1 Max 64GB / Apple MPS で 1枚 約13秒 (20 step / 512px)、ロード 7秒
  • 2026年の基準で見ると 絵本イラストレベル文字すら成立しない
  • ただし「絶対基準」として依然有用。Flux dev / Qwen Lightning が「すごい」と感じる感覚は SD 1.5 の絵を見た後で固まる
  • ライセンスは CreativeML OpenRAIL-M(公開当時の標準)、商用利用も可能だが現代の品質基準では推奨できない
  • 採用方針: 歴史教材・低リソース環境のフォールバック用途のみ

なぜこのモデルを試したか

ローカル画像生成の出発点」を比較に入れることで、4年間の進化を可視化するため。本記事のシリーズで「Flux dev は写実度トップ」「Qwen Lightning がローカル最強」という評価を出したが、それが何と比べてすごいのかを示す絶対基準が必要。

期待していた:

  • 笑える失敗の素材: 卵5個ラーメン、架空英文字、お経のような居酒屋、等
  • 4年でどこまで進化したかの基準点
  • 4GB という圧倒的な軽さで、Mac の他用途に影響を与えない

期待していなかった:

  • 現代の素材として使える品質
  • 文字描画の精度
  • 物体配置の整合性

結果: 「歴史教材」としての価値は満たしたが、現代の挿絵候補には全く入らない。Lightning / Flux dev / Gemini を見た後の SD 1.5 は、これがあったから今がある、という温度の絵に見える。

環境セットアップ

pip install diffusers==0.37.1 torch==2.11.0 transformers

ロードコード:

from diffusers import StableDiffusionPipeline
import torch

pipe = StableDiffusionPipeline.from_pretrained(
    "stable-diffusion-v1-5/stable-diffusion-v1-5",
    torch_dtype=torch.float16,
).to("mps")

image = pipe(
    prompt="...",
    num_inference_steps=20,
    guidance_scale=7.5,
    height=512,
    width=512,
).images[0]

ハード要件:

項目
Mac M1 Max / 64GB(実質 16GB でも動く)
モデル 4GB (fp16)
解像度 512x512(1024 では学習されていない、崩れる)
1枚あたり 約13秒 (20 step / 512px / MPS)
ロード時間 約7秒

他のローカル画像生成モデルと比べて圧倒的に軽い。Mac の作業中にバックグラウンドで動かしても他のアプリへの影響は無視できる。

8プロンプト全結果

# プロンプト 画像 生成時間
01 a cute cat sitting on a wooden bench in a sunny park 13.5秒
02 a bowl of ramen with chashu and soft-boiled egg 13.0秒
03 a wooden sign with "LOCAL AI" 13.0秒
04 a developer's t-shirt with "M1 MAX 64GB" retro 80s style 12.9秒
05 a woman developer working at a laptop 13.0秒
06 a glowing AI brain made of circuits and neon 12.9秒
07 three robots playing chess in a sunlit library 12.9秒
08 a wooden izakaya sign with the kanji "居酒屋" 12.9秒

8枚合計 約 104秒 = 1分40秒。Qwen Full の 12時間と比べて 約430倍速、ただし品質は別次元に劣る。

個別プロンプト評価

01 猫 — 顔が縦長、目の位置がズレる

ベンチに座る猫。顔が縦長に歪み、目の位置がズレている。Stable Diffusion 系の「動物の顔がやや変」という古典的な症状。背景は意外と自然(ベンチの木目、緑、ボケ)。

Flux dev (2024) Qwen Lightning (2025) SD 1.5 (2022)
Flux dev cat Qwen Lightning cat SD 1.5 cat
アニメ・イラスト調に流れる ほぼ実写、若干イラスト感あり 顔縦長、目ずれ、絵本イラスト風

02 ラーメン — 卵5個

卵5個が乗ったラーメンが出てくる。プロンプトには "soft-boiled egg" 単数形で書いたのに、SD 1.5 は要素を増やす癖がある。トッピングで卵追加しまくったのか?という典型的な失敗事例。

Flux dev (2024) Qwen Lightning (2025) SD 1.5 (2022)
Flux dev ramen Qwen Lightning ramen SD 1.5 ramen
パクチー入り(東南アジア混合) 緑の謎野菜だけ気になる、ほぼ完璧 卵5個、文化的破綻

4年でラーメンがちゃんとラーメンになった。SD 1.5 を見た後の Flux dev / Qwen Lightning の「よくできてる感」は、ここを基準にして決まる。

03 LOCAL AI — OOLDD AIXNIA という謎言語

Latin 文字すら正しく書けないOOLDD AIXNIA とか、それに近い崩れた文字列が出てくる。SD 1.5 は文字を「形」として処理しており、意味を持つ文字列として綴る能力が無い。

SDXL base (2023) Flux dev (2024) SD 1.5 (2022)
SDXL base LOCAL AI Flux dev LOCAL AI SD 1.5 LOCAL AI
"LOCAL LL" に崩れる "LOCAL AI" 完璧 OOLDD AIXNIA 謎言語

text encoder の世代交代で文字が綴れるようになった流れが一目で見える。CLIP-L (77 トークン) → T5-XXL (数千トークン) で英文字描画は段階的に改善。SD 1.5 はその出発点で、英文字の綴りすら成立しない世代。

04 M1 MAX 64GB Tシャツ — 同様に判読不能

80年代風 Tシャツの雰囲気は出るが、テキストはほぼ判読不能。記号化されたグラフィックとして処理される。

Flux dev (2024) SD 1.5 (2022)
Flux dev M1 MAX SD 1.5 M1 MAX
"M1 MAX 64GB" 完璧 + 80s シンセウェーブ完全再現 テキストは記号化、判読不能

05 女性開発者 — 意外とまともに見える

女性、眼鏡、ラップトップ、窓の前。指消失問題が出ない(手が机の下に隠れていて、SDXL より詐欺的に安定)。背景の白いマグカップ、PC バッグも自然。

Flux dev (2024) Qwen Lightning (2025) SD 1.5 (2022)
Flux dev woman Qwen Lightning woman SD 1.5 woman
実写、観葉植物・ノートまで小道具あり 実写、ストック写真として自然 一見まとも(指は隠して回避)

→ 構図が単純なプロンプトでは SD 1.5 でも一見成立する。「描かないことで安定する」点で SDXL Turbo と似た傾向。ただし現代モデルは「指を描いて崩れない」段階に進んだので、SD 1.5 の「隠して回避」は時代遅れ。

06 AI brain — ネオン回路、ファミコン風

緑のネオン回路に脳のシルエット。ファミコン風、レトロデジタル感。雰囲気はあるが、Flux dev / Qwen Lightning の解像度感とは遠い。素朴な味として可愛いが、現代の挿絵としては使えない。

Flux dev (2024) Qwen Lightning (2025) SD 1.5 (2022)
Flux dev AI brain Qwen Lightning AI brain SD 1.5 AI brain
ネオン粒子・光の走り、ローカル中トップ 実用域、Full から改善 ファミコン風レトロデジタル

→ 抽象アート系では SD 1.5 の素朴さが逆に味になることもあるが、現代の挿絵基準ではディテール・解像度感で完敗。サイバーパンク調を求めるなら Flux dev へ。

07 ロボとチェス — ロボットを忘れる

プロンプトは "three robots playing chess" なのに、出てきたのは 2人の子供がチェスをしている絵。SD 1.5 の プロンプト解釈の不完全さの典型例。

  • "three robots" → 数の指定無視 + ロボット忘却
  • "in a sunlit library" → 図書館は描く(本棚が背景)
  • "warm afternoon light" → 暖色光は出てる

要素ごとに反映の度合いが違い、「robots」のような複数形・抽象名詞は無視されがち。これは SD 1.5 の text encoder (CLIP ViT-L/14) の表現力の限界。

SDXL base (2023) Flux dev (2024) SD 1.5 (2022)
SDXL base robots Flux dev robots SD 1.5 robots
3体ちゃんと描ける 3体、表情・手のディテール充実 ロボットを忘れて子供2人

→ 「3体のロボット」というプロンプトに対する反応がSD 1.5 → SDXL の世代で大きく改善: SD 1.5 (忘却) → SDXL base (3体OK) → Flux 系 (3体 + 表情ディテール)。text encoder 強化(CLIP-L 単独 → CLIP-L+G → T5-XXL)の効果。

08 居酒屋 — 完全にお経・巻物

居酒屋の看板を期待して出てきたのは、お経の巻物。建物どころか提灯すら無い。書道作品が出てきた

漢字の「居酒屋」を学習データから検索しようとして、漢字 = 書道 = 巻物、という連想で全く別物に流れた、という構造。

Flux dev (2024) Qwen Lightning (2025) SD 1.5 (2022)
Flux dev izakaya Qwen Lightning izakaya SD 1.5 izakaya
京都町家風 + 架空字「典桔」 「居酒屋」3文字完璧 + 暖色照明の店構え お経・巻物(建物すら無い)

→ SD 1.5 の アジア要素の処理は壊滅的。Flux dev でも架空字、Qwen Full でも誤魔化し気味なのに、SD 1.5 はそもそも「居酒屋」というカテゴリに到達しない。Qwen Lightning の登場まで、ローカルで漢字を書ける選択肢は無かったという4年の歴史が、この比較で見える。

良かった点

  1. 超軽量: 4GB、ロード 7秒、Mac の他用途と共存可能
  2. 古典として安定: 4年の運用実績、トラブルシュートの情報量が圧倒的
  3. CreativeML OpenRAIL-M ライセンス: 商用 OK(ただし品質的に推奨しない)
  4. エコシステムが豊富: LoRA、ControlNet、Inpaint など派生ツールが大量にある
  5. 「絶対基準」としての価値: 比較対象として使えば、現代モデルの凄さが見える

悪かった点

  1. 絵本イラストレベルの品質: 現代の挿絵基準では使えない
  2. 文字描画 NG: "LOCAL AI" すら綴れない
  3. アジア要素は壊滅的: 漢字 → お経・巻物に流れる
  4. プロンプト解釈が不完全: 数の指定や複数形を無視する
  5. 解像度 512 固定: 1024 では学習データが無く崩れる

このモデルが活きるユースケース

率直に:SD 1.5 のクオリティは、2026年の基準で実用域じゃない

  • 02 ラーメンに卵が5個乗る
  • 03 LOCAL AI が OOLDD AIXNIA という架空の謎言語になる
  • 07 「3体のロボット」を勝手に「2人の子供」に置き換える
  • 08 居酒屋がお経・巻物として出てくる
  • 解像度 512 固定で 1024 学習データを持っていない

これらは Flux schnell / Qwen Lightning では発生しない問題で、SD 1.5 を「現代の挿絵候補」として使う場面は無い。それでも使う理由を挙げるなら:

  • 歴史教材: 「ローカル画像生成の出発点」を見せる、4年の進化を可視化する目的
  • 絶対基準: 他モデルの評価をするときの最低ライン、Flux dev / Qwen Lightning が「すごい」と感じる感覚は SD 1.5 を見た後で固まる
  • 派生エコシステムの実験: LoRA / ControlNet / Inpaint の情報量・モデル数は SD 1.5 が最大、ニッチ用途で必要なら依然有用
  • 超低リソース環境: 4GB / VRAM 4GB でも動くローカル画像生成の最低ライン
  • 現代の挿絵候補: 2022年水準で、現代基準で見ると絵本レベル
  • 本記事の採用方針に入る: 採用方針(英語圏 = Flux dev / アジア圏 = Qwen Lightning)に SD 1.5 が入るシーンは無い

ハマりポイント / Tips

1. 1024x1024 で動かさない

# ❌ SDXL の感覚でやると崩れる
image = pipe(prompt=p, height=1024, width=1024, ...)

# ✅ SD 1.5 は 512 で学習
image = pipe(prompt=p, height=512, width=512, ...)

SD 1.5 の学習データは 512x512 中心。1024 は学習範囲外で、繰り返しパターンが出たり構図が崩れたりする。SD 1.5 を 1024 で動かす意味は無い(その用途なら SDXL)。

2. プロンプトはシンプルに、ネガティブプロンプトを併用する

SD 1.5 は ネガティブプロンプト が前提のモデル。Flux 系では使わなくなったが、SD 1.5 では:

neg = "low quality, blurry, distorted, extra fingers, bad anatomy, worst quality"
image = pipe(prompt=p, negative_prompt=neg, ...).images[0]

これを入れると指消失や顔の歪みがやや緩和する。Flux 以降のモデルは内部で同等の処理が組み込まれているので不要だが、SD 1.5 では明示が必要。

3. seed を変えてガチャを回す

SD 1.5 は 生成のばらつきが大きい。同じプロンプトで seed を 5-10 回振ると、まともな1枚が混じる。Flux dev / Qwen Lightning は seed 1発でほぼ最大品質に到達するが、SD 1.5 は数撃ちが前提。

4. LoRA / ControlNet の存在を理解しておく

SD 1.5 単体では崩れるが、LoRA で特定スタイルに特化させる + ControlNet で構図を固定する と、現代でも使える素材が出ることがある。本記事のような「裸の SD 1.5 評価」は、エコシステム抜きの最低ラインでしかない。

5. CLIP text encoder の限界を意識する

SD 1.5 の text encoder は CLIP ViT-L/14 で、77トークン制限。長いプロンプトは後半が無視される。重要キーワードは前に。Flux 系の T5-XXL(数千トークン対応)と桁違いに表現力が低い。

4年の進化を見る

本記事のシリーズで時系列に並べると:

モデル サイズ 解像度 キャラ
2022 SD 1.5 4GB 512 絵本レベル、文字 NG、アジア要素壊滅
2023 SDXL base (2023) 7GB 1024 中堅安定、要素追加癖、SDXL あるある
2023 SDXL Turbo (2023) 7GB 512 ADD 蒸留、1秒生成、ぼやけ
2024 SD 3.5 Medium (2024) 5GB 1024 DiT、サムネ OK、原寸 NG
2024 Flux schnell (2024) 23GB 1024 4-step Apache 2.0
2024 Flux dev (2024) 23GB 1024 写実トップ、英文字完璧、アジア NG
2025 Qwen-Image (Full) 40GB 1024 漢字 OK、1枚 93分
2025 Qwen-Image Lightning 40GB 1024 8-step LoRA、ローカル最強候補

4年で 10倍のサイズ、解像度 4倍、文字描画は壊滅 → 完璧、アジア要素は壊滅 → 完璧。SD 1.5 を見ていれば、これがどれだけ大きな進化か実感できる。

比較記事と次のモデルへ

シリーズ内の関連記事:


検証環境: Mac M1 Max 64GB / macOS 25.4 / Python 3.14 / Diffusers 0.37.1 / PyTorch 2.11 (MPS) 作業ログ: 2026-04-29、Stable Diffusion 1.5 (stable-diffusion-v1-5/stable-diffusion-v1-5, 20-step / guidance 7.5 / 512px)